セラミック治療の新しい形として注目されている「セレック」ですが、従来の方法とどのように異なるのでしょうか?ここではセレックのメリット・デメリット、治療を行う上での注意点を解説します。

セレックとは?

セレック(CEREC)とは、シロナ社が開発したセラミック治療を行うための歯科用機器の名称で、1985年に世界初の歯科用CAD/CAMとして臨床応用されるようになりました。CADとはコンピューターでデザインを行うシステムで、CAMとはデザインしたものを削り、セラミック歯にする機械を指します。ヨーロッパやアメリカを中心に世界中の歯科医院で採用されており、その症例数は1,000万以上といわれています。

セレック治療をおすすめする人

セレック治療は以下のような方におすすめです。

・銀歯を白い歯にしたいと思っている方
セレック治療で使用するセラミックは、天然の歯に近い自然な色調、発色が特徴です。審美的な観点から、銀歯を白い歯にしたい方にはセレック治療がおすすめです。

・短時間で治療を終えたい方
一般的にセラミック治療は、時間がかかるとされています。まず歯科医院で型取りを行い、歯科医は技工所にセラミック歯の製作を依頼します。そして技工所で歯科技工士がセラミックを削り、人工歯を製作していきます。製作は1つ1つ手作業のため、数週間を要する場合があります。
それに対してセレック治療は、歯科医院に設置してある機械で口腔内をスキャンして、CADでデザインしCAMでセラミックのブロックを削ります。その場でセットできるため、最短1日で治療は完了します。仕事などで忙しく、なかなか通院できない方におすすめの治療法です。

・虫歯の再発が心配な方
銀歯などで詰め物をしても、さまざまな原因で虫歯が再発することがあります。セレック治療で使用するセラミックは審美的にも優れた素材に加え、虫歯の細菌が付着しにくいのが特徴です。そのため、きちんとケアをすれば虫歯の再発リスクも抑えられるので、虫歯に悩まされてきた方にもおすすめの治療法です。

・セラミック治療の費用をできるだけ抑えたい方
上述したように、一般的なセラミック治療において人工歯の製作はオーダーメイドのため、費用が高額になってしまいます。これに対してセレックは、設計から製作まで技術者の手ではなく機械によって行われるため、比較的コストを抑えられます。

・金属アレルギーを持っている方
保険適用の治療で歯の詰め物などに使用される金属には、銀・銅・亜鉛・パラジウムなどがあり、蓄積すると人体にとって有害な場合があります。こうした金属は口の中でイオンとして溶け出し、アレルギーを引き起こす点が指摘されているのです。それが原因で歯茎が炎症を起こしたり、手足のかゆみ、皮膚炎、肩こりや頭痛、疲労感につながったりするともいわれています。金属アレルギーが心配な方には、セレックで使用されるメタルフリーのセラミック治療がおすすめです。

・型取りが苦手な方
一般的なセラミック治療では、人工歯を製作するために型取りをしなければなりませんが、不快に感じたり、気持ち悪くなったりする方もいます。それに対して、セレックでは3D光学カメラで口腔内をスキャンするだけで、歯列のデータがわずか数秒でコンピューターに取り込まれるため、型取りが苦手な方にもおすすめの治療法であるといえるでしょう。

セレック治療のメリット・デメリット

セレック治療にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下、それぞれ3つずつ解説いたします。

セレック治療のメリット

・治療期間が短い
セレック治療の大きなメリットのひとつは、短時間で治療が可能な点です。一般的なセラミック治療の型取り後に技工所へ発注、歯科技工士が人工歯を製作のプロセスを省くことができるため、最短1日で治療が完了します。

・低価格なのに精度が高い
歯科技工士に1つ1つセラミックを削ってもらう必要がないため、コストが抑えられるだけでなく、セレックで製作される人工歯は精度が高いといえます。歯科技工士がいくら高い技術を持っていても、すべての人工歯を同じ高いクオリティで製作は難しいといわれています。精度のばらつきは避けられず、実際に詰め物としてセットしたときに少しのズレが違和感を生むこともあります。
この点、セレックは測定から設計、製作まですべてコンピューターや機械が行うため、同じ高いクオリティを保てるといえます。

・変色が少なく、長持ちする
セレックで使用されるセラミックは、変色が少ないというメリットもあります。特に100%セラミックからできているオールセラミックは、きちんとしたケアで長く美しい白さを保ち続けられます。セラミックはいわば陶器であるため、水分を吸収しない陶器が長年使用しても変色しない原理と同じです。
上述したように、セラミックは虫歯の原因となるプラークが付着しにくいため、二次虫歯も防ぐことができます。セレックで治療した後も、長期間にわたりセラミック歯を使用し続けられる点もメリットのひとつといえるでしょう。

セレック治療のデメリット

・セラミックが破損する可能性がある
セレック治療に限ったことではありませんが、セラミックは陶器であるため強い力が加わると破損のリスクが考えられます。例えば前歯にセラミック歯を使用した場合、スポーツ時にボールや人とぶつかったり、転倒したりなどで破損する恐れがあります。また、奥歯の詰め物などにセラミックを使用する場合も、歯ぎしりで強い力が加わると割れる心配があります。ただし、セレックはコンピューター上に一人ひとりの歯列に関するデータが保存されているので、修復は可能です。

・すべての症例には対応していない
短期間・低コスト・高い精度でセラミック治療が可能なセレックですが、すべての症例に対応しているわけではありません。例えば、ブリッジに使用するのは難しいとされています。

・保険が適用されない
こちらもセレック治療に限ったことではありませんが、審美目的のセラミック治療には保険が適用されません。そのため、治療費は高額になる傾向にあります。もっとも、従来のセラミック治療よりもセレック治療の方が、比較的に安価で行えることは上述したとおりです。

セレック治療を行う際の注意点

セレック治療を行う際に、注意したい点を見ていきましょう。

治療前に注意したい点

セレック治療を始める前に、歯科医のカウンセリングをしっかり受けるようにしましょう。セラミック治療は主に審美目的で行いますが、いくら白くて美しい歯を手に入れても、噛み合わせに問題があれば意味がありません。自分が抱えている歯の悩みがセレック治療によって解決されるのか、歯科医任せにせず納得するまでしっかり相談をおすすめします。

治療中に注意したい点

セレックで使用するセラミックブロックと、患者さん自身の歯の色調が合わないこともあります。精度やコスト面で優れたセレックですが、セラミックの歯の色合いなどは最終的には自分で必ず確認するようにしましょう。

治療後に注意したい点

セレック治療だけに限らず、セラミックの歯を長く使うためには治療後のケアが大切です。セラミック自体が虫歯になりづらく長持ちする素材とはいえ、リスクはなくなりません。そのため、セレック治療後も毎日丁寧に歯磨きをしましょう。さらに、セラミックを取り付けた歯が虫歯になることもあり、その場合は詰め物や被せ物を交換する必要が生じます。自分で行うケアに加えて、セレック治療後には定期的に歯科医院に通い、検診を受けてお口の状態をチェックしてもらいましょう。